2012-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ブログはしばらく不定期掲載になります

先月の半ばから、今日まで毎日ブログと称して自分の随筆などを掲載してまいりましたが。来月からは、不定期の掲載になります。 暑くって疲れちまったのもありますが、自筆原稿(のコピー)の自選集(数編だけ)の自費出版(コピーを綴じるだけ)を計画してお…

旅のそぞろ神に引かれて 第5回 〜大陸の厠(かわや)〜

これから書くのは、甚だ汚穢(おわい)な話である。厠(かわや)の話である。真夏にふさわしい恐怖の話しである。 北京の留学生楼(宿舎)の厠は、北京にある厠の中では相当にきれいな方であった。 楼の厠は水洗式だったが、紙を流すことは禁止されており、…

音楽の力を信じて 第5回 〜音楽の間と魔〜

落語が好きでたまに寄席(よせ)に行くことがある。どの寄席でも三時間くらいのプログラムで多数の噺家が主演し、合間には漫才や曲芸などの色物(いろもの)が芸を競う。 早い時間に出てくるのは、前座や二つ目などこれから芸が伸びていくとされる芸人で、プ…

こんなものを作って食った 第5回 〜『暮しの手帖』ふう札幌のラーメン〜

私の親の手許に、創刊第22号から20年ほど前までの『暮しの手帖』が揃っている。『暮しの手帖』は戦後間もなく創刊した希有の編集方針を持つ生活雑誌だ。広告を掲載しないことによって、食品から日用品、雑貨、電化製品まで厳しい商品テストをしてその結果を…

音楽の力を信じて 第4回 〜高校吹奏楽部の思い出〜

私が入った高校は、東京の北の外れにある都立高校で、創立してからまだ新しく私は第七期生であった。 入学式後、数日もしないうちに私は楽器の音を頼りに練習場所へ行ってみた。しかし、そこは音楽室ではなく家庭科室であった。あたたかく歓迎してもらってさ…

うつなる人へ 第4回 〜自分は世の中に合わないのか〜

うつになるとほとんど誰でも、まず自分のことを責めてしまうものです。自分がダメな人間だと思い込んでしまうこともあります。あるいは、何でもないことでも不安に感じたり、何もかもがマイナスに思われたりします。 そして「自分は世の中に合わないのか」と…

こんなものを作って食った 第4回 〜スパゲティー・ミートソース〜

前回に書いたラグメンが、シルクロードを通って西へ西へと行って、イタリアにたどり着いて、スパゲティー・ミートソースのような料理になったと想像するのは楽しい。 それにしても、1960年代から70年代に育った者にとって、このスパゲティー・ミートソースは…

旅のそぞろ神に引かれて 第4回 〜真夏の黄色いサクランボ〜

小学校二年生の夏休みに初めて伊豆七島の新島へ行った。それ以降、父が島への旅が気に入ったのか家族旅行で神津島、三宅島、八丈島を訪れた。 父の郷里の信州へ行くなど通常の旅行であれば朝に家を出発するが、これらの島へ船で渡るには、夜に家を出発して翌…

私のTOKYO1964 第4回 〜すがもこまごめこまごめすがも〜

「すがもこまごめこまごめすがも」というのは早口言葉だ。早口としては甘いが、巣鴨と駒込という地名を詠み込むための早口言葉なのであろう。どちらも山手線の駅名になっているくらいだから、東京に住んでいる人なら聞いたことがあるだろう地名だ。 この早口…

こんな映画を観た 第3回 〜さようなら黒澤映画〜

2010年の11月から12月にかけて「生誕百年 映画監督 黒澤明」という特集上映が、東京国立近代美術館フィルムセンターで開催された。黒澤明監督の全作品と脚本作品の上映があった。 私はこのとき、仕事が一段落した12月上旬から観たが、1日に3本の各回入れ替え…

わたくし的には 第3回 〜電車で業(ごう)〜

わたくし的には 第3回 〜電車で業(ごう)〜 電車の中でのマナーが、いろいろなところで言われ続けている。 ひと昔前、ちょっと反社会的な人物や、昔で言うところの愚連隊的な人物が、電車の中でふんぞり返って座っていたとする。これらの人物は、なぜふんぞ…

詩 第3回 〜元気じゃなくっていい〜

みんな他人のせいにしてしまえ 泣いて 泣いて 泣いてしまえ ののしって ののしって ののしってしまえ わめいて わめいて わめいてしまえ みんな 他人のせいにしてしまえ ぜんぜん かまうことはない 泣いて 泣いて みんな 他人のせいにしてしまえ ぜんせん か…

食ったものはいつか転生す 第3回 〜日本そば屋の五目中華〜

高級であるかまあまあ中級の中華料理店では、中華料理だけが品書きに載っているものだが、大衆的な中華料理屋だと、親子丼だとかカレーライスだとか時にはオムライスなどが品書きに見える。 周囲にあまり食べ物屋がないような郊外の店であれば、客の要請に応…

音楽の力を信じて 第3回 〜生まれ変わったら何の楽器?〜

生まれ変わって何か別の楽器をやることができるとしたら、何がいいか。そんなことを考えることがある。 いつもそれは打楽器である。もちろん、わざわざ生まれ変わらなくても、来世は鳥になりたいとか、虫にだけはなりたくないとか、鼻が高く生まれたいとかい…

うつなる人へ 第3回 〜人に頼るということ〜

「うつ」という状態は心が悲鳴を上げている状態ですから、自力で回復させることは簡単なことではありません。心の問題であるため「自分の心のコントロールを自分でする」ということは、骨折した手で骨折した手を治療するようなものかもしれません。 そこで、…

こんなものを作って食った 第3回 〜シルクロードのラグメン〜

1990年と2000年の2回、中国の北京からパキスタンのイスラマバードまでのシルクロードを、鉄道とバスを使った陸路の旅をした。 その時、新彊ウイグル自治区のウルムチやカシュガールで何度も食ったのがこのラグメン。ウイグル族を中心としたシルクロードのイ…

旅のそぞろ神に引かれて 第2回 〜人民解放軍のお宿〜

旅のそぞろ神に引かれて 第2回 〜人民解放軍のお宿〜 値段は安いけれども環境は最悪、という宿に泊まった最初はインドのお宿だった。 初めての海外旅行で、一人旅で、往復の航空券の予約だけで、短い日程で、インドのデリーからカルカッタまで汽車の旅という…

酒の追憶 第3回 〜コップ半分のビールと同期Rの思い出〜

酒の追憶 第3回 〜コップ半分のビールと同期Rの思い出〜 私が新卒の頃はまだバブル景気の最中にあって、卒業式直前に応募してすぐに入社が決まった業界新聞社でも、会社の規模の割りにはたくさんの新卒者を採用していた。 その中にRという男がいた。中背でや…

僕のTOKYO1964 第3回 〜五島プラネタリウムの夕暮れ〜

1964年生まれの私が小学校3、4年の頃だから、1970年代の半ばだろう、渋谷の五島プラネタリウムに毎月のように通った。 ひんぱんに行くようになったきっかけは忘れてしまったが、いつも同じ社宅の1つ2つ年上の子らと一緒に行ったのだから、彼らに誘われたもの…

私の戦争1964 第2回 〜3月10日 母が体験した東京大空襲〜

私の母が子ども時代を過ごしたのは、現在の墨田区向島付近、戦前の向島区寺島町界隈であった。 大正時代、おそらく関東大震災後の復興を期に、会津から出て来た私の祖父と、同じく会津から出て来た祖母との間に生まれた。 祖父は電気の専門学校、祖母は看護…

こんな映画を観た 第2回 〜中国映画を観た頃〜

1988年だと思うが、渋谷のユーロスペースで『紅いコーリャン』(1987年、張藝謀監督)を観たのが、こののち続々と上陸してくる中国映画の名作に夢中になった最初だった。 この年、神保町の岩波ホールで『芙蓉鎮』(1987年、謝晋監督)のロングラン上映が話題…

わたくし的には 第2回 〜放送や新聞では「やばい」と言って欲しくない〜

時事通信社発行の『記事スタイルブック』(1989年)の中に「差別語・不快語」という項があり、その中で「特殊な分野や世界で使われる隠語やスラング、その他、品位を落とし、読者に不快感を与える語句はなるべく使わない」として、サツ、デカ、ブタ箱、チク…

食ったものはいつか転生す 第2回 〜祭りの夜店のフライ〜

毎年7月1日の富士山の山開きに合わせて、東京の本駒込にある富士神社ではその前後に祭礼が行われる。駒込界隈では「お富士山(あるいは「お富士さん」か)と呼ばれていた。 私は限りなく巣鴨に近い駒込の生まれ育ちで、富士神社は限りなく駒込に近い本駒込に…

詩 第2回 〜ひとりでいるのもわるくない〜

ノクターン マスネのタイスの瞑想曲 シューマンのトロイメライ パッヘルベルのカノン バッハのG線上のアリア マスカーニのカヴァレリア・ルスティカーナの前奏曲 ドビュッシーの月の光 ポンキエッリの時の踊り リムスキー・コルサコフのシェエラザードの若い…

音楽の力を信じて 第2回 〜クラシック音楽って何だろう〜

クラシック音楽って何だろう。そんなことを考え始めたのは、吹奏楽で演奏する音楽ジャンルの中でも重要な「ポップス」についてのルーツを考えようと思ったからだ。 ポップス、ポピュラー音楽、軽音楽などといわれる音楽は、日本はもちろん今では世界中にあふ…

こんなものを作って食った第2回 〜北京の牛肉麺〜

旅先で食ってうまかったものを、日常生活の中で時たま作って食うのは結構愉しい。いや実に愉しい。大きな心の慰めになる。麺類なら、中央アジアはウイグル料理のラグメンを、そして北京でよく食った牛肉麺を作って食う。 1、麺は小麦粉だけで作る。薄力粉を…

沖縄4日間の旅 第7回最終回 〜沖縄の戦地に咲く花を見た〜

沖縄を去る日の朝も、大音声(だいおんじょう)放送には気づかずに目覚めた。 布団の上に寝転んだまま、窓から入ってくるさわやかな風を顔に受け、昨晩、那覇市内の小さな台湾料理屋で酔いしれたことを思い出す。シジミのニンニク醤油漬けの強烈な香りも記憶…

うつなる人へ 第2回 〜自分のタブーを破ってしまえ〜

うつになるような人は、たいていまじめな人です。 もし人からは、それほどまじめに見えなかったとしても、心の中はまじめで繊細で、人前ではそう見えないよう演技をしているのです。無理にでも演技をしている。 また、ざっくばらんな人であっても、あまりに…

旅のそぞろ神に引かれて 第2回 〜魔法のコーヒーを出すインドのチャイ売り〜

インド・イスラム文化圏では体調が万全でないと、たちまち食う気が失せてしまう。弱った体には、香辛料と油脂がたっぷりの食事はなかなか受け付け難いからだ。そんな時には、甘いミルクティーが実にありがたい。私は、インドに1度、パキスタンに2度旅行して…

沖縄4日間の旅 第6回 〜この日嘉手納基地は静かだった〜

昼飯は、また梅原君おすすめの沖縄そば屋へ行った。私としては、沖縄にいる間にできるだけたくさんの沖縄そばを食いたいので大歓迎だ。 この店もそうだが、多くの飲食店はそのたたずまいが本土の飲食店とはだいぶ違う。少なくとも東京周辺には見られないもの…