詩 第2回 〜ひとりでいるのもわるくない〜

ノクターン


マスネのタイスの瞑想曲
シューマントロイメライ
パッヘルベルのカノン
バッハのG線上のアリア
マスカーニのカヴァレリア・ルスティカーナの前奏曲
ドビュッシーの月の光
ポンキエッリの時の踊り
リムスキー・コルサコフシェエラザードの若い王子と王女
ビゼーアルルの女第一組曲 前奏曲の白痴の動機
僕は そう これから ショパンノクターン変ホ長調作品9の2を聴いてみよう
今宵は この曲が好きな僕を 僕が慈しむのです


寂死


憤りのあまり死ぬのを憤死という
寂しさのあまり死ぬのは寂死
じゃくしといおう


しらす干し


パックからしらす干しを取り出す
箸でていねいに取り出す
でも何匹かは
粉々になって死んじゃった
食べられないまま
死んじゃった
死んじゃったしらす干しも含めて
みんな合わせて
しらす干し


親も兄弟も大きらい


腹が減ってたから
疲れてたから
飯の支度をしていたら
離れている親兄弟がきらいになってきた
ずっと若い頃に言われた言葉
今の自分との考え方の違い
もっと自分を見習えば良いのに
もっと自分を認めて屈服すればいいのに
どんどん憎くなってくる
あわただしく食べ終わって
一息ついたら
憎くなくなっていた


知っているのは自分だけ


初めて来た武蔵野の外れ
ひとりで歩く
どこまでもずーっとひとりで歩く
石ころの道
雑木林
崖線下の湧水
夏草のにおい
しじみ
今ひとりで歩いていることは
誰も知らない
知っているのは
自分だけ


目をつぶったら死んでしまいそう


寂しくて寂しくて
目をつぶったら
そのまま死んでしまいそう