2012-06-01から1ヶ月間の記事一覧

酒の追憶 第2回 〜パイカルと呼ばれた酒〜

中国の酒というと、たいていはいわゆる紹興酒を思い浮かべるのではないかと思う。紹興酒は、中国の酒の中で「黄酒(ホワンチュウ)」に分類されるもので、米を原料とした黄色というよりは茶色をしている醸造酒で、華中から華南にかけて醸造され消費されてい…

私の戦争1964 第1回 〜戦争が終わって19年後に生まれた私〜

私が生まれた1964(昭和39)年は、東京オリンピックが開催され、日本が高度経済成長に突入していった年である。 その19年前の1945(昭和20)年8月15日に戦争が終わった。 1931年に起こった満州事変、1937年の盧溝橋事件から続いた中国との戦争の終わりであり…

沖縄4日間の旅 第4回 〜アヅマの旅人の感覚〜

やって来られた考古学研究者は名護博さんという、沖縄本島出身の方で本職は農学博士だ。私が滞在している短い間にお会いできたというこの偶然は、私にはまったくの幸運であった。名護先生とは翌日朝に再会して、沖縄の古代史をこの玉城の地にある遺跡を訪ね…

こんな映画を観た 第1回 〜すてきな中谷一郎さん〜

この俳優の名を聞いて、すぐに誰か分かる人は、なかなかの映画ファンではないだろうか。そして、ある程度の年輩の方であれば、テレビの『水戸黄門』で「風車の弥七」をやっていた役者として思い出すのではないか。 私も邦画を自分で積極的に観るようになるま…

沖縄4日間の旅 第3回 〜おばあのバナナ牛乳〜

「皆さん!! おはようございます!!!」という、窓外からの大音声(だいおんじょう)が耳に飛び込んできた。 思わず「ううっ」とうめいて、眼鏡を掛けないまま、枕元の携帯を手探りで探し引き寄せ、顔にうんと近付けて見る。午前7時。“元気いっぱい”の声は…

わたくし的には 第1回 〜原発の問題は哲学の問題〜

天災は、天から降ってくる災いだから、大地震も津波も発生そのものを抑えることはできない。これはもう何万年前、何百万年前から繰り返し起こっていることだ。 もちろん、その被害を最小限にしたり被害者を救済することは、政治や社会の役割であるから、それ…

沖縄4日間の旅 第2回 〜本土からの客〜

那覇バスターミナル近くのその居酒屋は建物の1階にあり、オープンテラスのような席も外に設けてあるが、店内は東京にあるような大きな居酒屋と変わらない。ただ、周囲には他に店もなくビルもなく、人影も外灯も少ない中にぽつんと居酒屋だけがある。しかし店…

食ったものはいつか転生す 第1回 〜私的おでん年代記〜

おでんが好きで、秋から春にかけて何回も作って食う。けれども子どもの頃は、家で食うおでんをうまいと思ったことはなかった。どうも、おでんが飯の菜にならなかったからである。 今は酒の肴におでんを作る。私は家では酒を飲まないが、おでんを作った時には…

沖縄4日間の旅 第1回 〜宮古島から那覇へ〜

宮古空港を定時に出発した那覇行きの飛行機は、ほぼ満席だった。 初めて訪れた沖縄県の島は、宮古島。私が所属していた世田谷区民吹奏楽団の交歓演奏会を宮古島で無事に終え、団員たちと別れて一人、沖縄本島へと向かった。2010年10月初旬の日曜日、午後6時…

詩 第1回 〜季節は移り僕はまだ生きている〜

河童河太郎 うちの近所の小さな野川に 人知れず河童の河太郎が住んでいる 雨の日はいつも一人で膝を抱えて 草の河原に座り込んでいる 少し濁った川面に無数に生まれる雨滴の輪 一年でいちばん鮮やかに濃くなった緑の葉っぱ そしてぼんやりとした空の色 それ…

音楽の力を信じて 第1回 〜京劇の夜〜

前に北京へ行った折り、中国の伝統楽器の音楽テープをたくさん購入してきた。シリーズもののようになっていて、それぞれの楽器ごとの曲集として19種類を買った。中国の伝統楽器、とりわけ漢民族を中心とした伝統楽器が何種類あるのか私は知らないが、その店…

こんなものを作って食った 第1回 〜マトンカレー〜

こんなものを作って食った 食い意地が張っているのと、家で仕事をしている時間が多いのとで、よく料理をする。それらの料理の中で、特別な思い入れがあったり、そんなものはなくてただ単に好きな食べ物だったりを、エッセイ付きのレシピで紹介する。ただし、…

うつなる人へ 第1回 〜自殺予防の方法はあるか〜

私自身が、いわゆる「うつ病」を患っていたのと、厚生労働省2001年認定「初級産業カウンセラー」(メンタルケア)資格と中央労災防止協会2002年認定「心理相談員」資格を持っていること、他にいくつかの精神保健に関する研修(精神対話士、いのちの電話相談…

旅のそぞろ神に引かれて 第1回 〜幽霊よ9時間だけ滞在させてくれ〜

私は幽霊といったものを必ずしも信じているわけではない。いるのかいないのか、私には分からない。しかし、幽霊とか霊魂が存在していたらおもしろい、とは思う。 あれは、吹奏楽の仲間とマレーシアでの交歓演奏会を終えて、現地解散した後に、一人でタイのバ…

僕のTOKYO1964 第1回 〜山手線巣鴨貨物駅の向こうにI子ちゃんの家〜

山手線は、大塚駅付近では高架上を走っているが、わずか1駅先の巣鴨駅に至る途中で、台地に突入して一気に谷間になってしまう。そこから巣鴨駅を抜け、次の駒込駅の途中までは、線路が両側の道路よりもはるかに低い切り通しになる。 駒込駅ではそのホームの…

酒の追憶 第1回 〜焼酎の牛乳割り〜

学生の頃、1年間ほどだったか東京北区の王子辺のコンビニエンスストアでアルバイトをしていた。 24時間営業で酒を置いている店なので、いろいろな人が酒を買いに来た。 朝の7時頃にいつも来ていた小柄の男性は、トリスウイスキーのポケット瓶を極まって1本買…

これから随筆をこのブログに

私の毎日の、いろいろな、くだらないことだったり、真剣なことだったり、そんな思ったことややったことは、Facebookに書いております。 以前、ホームページで書いておりました、随筆などを、ホームページなき今、この場に書こうと思っています。 これまで書…

フェイスブックというのを始めた

フェイスブックというのを始めた。 こういうものを始めるにあたっては、いろいろと思うこともあったが、とにかく始めてみた。 ブログとの使い分けも悩んだ(今も悩んでいる)が、ブログの方は、比較的長文の随筆のようなものや、詩のようなものにしてみよう…

帳場格子を結界というそうだ

つい先日、新聞を読んでいて、江戸の昔の商家の、帳場格子を「結界」と呼ぶという記述があり、「へえ、知らなかった」と思った。 現在はなかなか帳場格子などを見ることはなく、骨董屋でいつだったか見かけた。 そういえば、以前に仕事で行った、東北の蔦温…