こんなものを作って食った 第4回 〜スパゲティー・ミートソース〜

 前回に書いたラグメンが、シルクロードを通って西へ西へと行って、イタリアにたどり着いて、スパゲティー・ミートソースのような料理になったと想像するのは楽しい。
 それにしても、1960年代から70年代に育った者にとって、このスパゲティー・ミートソースは大変なごちそうだ。これは「何々パスタ」ではなく、あくまでも「スパゲティー・ミートソース」である。


1、材料は、ひき肉(豚でも牛でも合挽きでも鶏でもそれぞれに味がある)、タマネギ、ニンニク、ピーマン、インゲンなどの豆、キノコ類、あればセロリかパセリ、あれば生バジルか乾燥粉バジル、トマト缶、月桂樹の葉食用油(オリーブオイルかグレープシードオイルが良い)、赤ワイン。


2、タマネギとニンニクはみじん切りにするが、ハンバーグに入れるタマネギのようにまで細かく切らなくても、別に問題ない。ニンニクは大量に入れるのが好ましいが、炒めてしまえばそれほどにおいは気にならない。そのほかの野菜もみじん切りにする。


3、油を入れて、ひき肉と月桂樹の葉を炒める、適当なところで野菜を入れ、さらにトマトを入れる。どのタイミングで何を入れるかというのは、何となくだが、それぞれの素材の水分の飛び加減による。適当に炒められたところで、赤ワインを入れる。


4、あとは焦げ付かないように、弱火でゆっくりと煮込む。最初はトマトの水分が多いが、煮込むうちにトマトも形がすっかり崩れ、水分も少なくなる。調味料は、塩と砂糖を入れる。入れるタイミングは適当。
 砂糖は、家庭料理の感覚や、大人の感覚で入れると、甘さが足りないことに驚く。同時にできいあのものや外食のものがいかに甘いかも分かる。そして、ある程度甘くないとつまらいと思うかも知れない。焦げ付かないようにするのが大切。
 家で仕事をしている時は、この煮込み段階に入ると、また少し作業ができる。時々、焦げ付いていないかを見に行くのは、作業の手と目を休めることにもなってちょうど良い。
 煮込む時間は、30分くらいだろうか。1時間はいらないと思う。具の水分が少なくなると、麺に乗せた時に、こんもりとなってうまそうに見える。


5、ほぼ煮込みの目処がついたら、麺をゆでる。どんな麺でも構わない。ゆでたら、よく水気を切って、ソースを乗せて完成。ペッパーソースや粉チーズをかけて食う。唐辛子を漬け込んだオリーブオイルをかけるのも良い。


 冒頭に述べたように、ラグメン(あるいはそれに近い麺料理)がイタリアに伝わって、スパゲティー・ミートソースになったのかどうかは、私には想像をするしかない。
 麺そのものはおそらく大昔に、小麦の産地を通じて中国から西へ広がったことだろう。しかし、南米原産だというトマトは、どこからラグメンのある中央アジアに入ったのだろうか。
 南米からヨーロッパ人がヨーロッパに持ち込んで、それが東へ行ったのだろうか。それともヨーロッパ人が、インド、東南アジアを経て中国に持ち込み、そこからシルクロードを通じて中央アジアに至ったのか。あるいはインドからヒマラヤを越えたのかも知れない。
 だから、麺とトマトが出会ったのは、中央アジアとイタリアとどちらが先だったのかもはっきりと分からない。あるいは、双方別々のルートで入って来てそれぞれで出会い、それぞれがラグメンとスパゲティー・ミートソースになった可能性もある。ちょうど南米とアフリカで、サボテンと多肉植物がそっくりな姿で平行進化したかのように。