うつなる人へ 〜自分は世の中に合わないのか〜

 うつになるとほとんど誰でも、まず自分のことを責めてしまうものです。自分がダメな人間だと思い込んでしまうこともあります。あるいは、何でもないことでも不安に感じたり、何もかもがマイナスに思われたりします。
 そして「自分は世の中に合わないのか」と考えてしまうことも多くあることです。
 世の中でおもしろいと言われていることが自分にはちっともおもしろいと思えない、群れてはしゃいでいる中に入るには相当に無理をする、まじめにやればやるほど評価されない、「あんな人間がどうして」と思うような人が評判が良いことが理解できない、などなど。
 こんなことが多いと、世の中に合わない自分はダメなのでないか、と考えてしまうのです。
 何でもかんでも自分が悪いのだと自分を責めてしまったり、マイナスに考えてしまったりするのは、心の状態や気分のせいであって、心の状態が良くなって気分が変わればそんなふうに思わなくなります。細かい事も気にならなくなるし、前向きに考えられるようになるものです。


 では「自分は世の中に合わないのか」という考えはどうでしょう。
 私は、この考えは気分によってもそれほど変わらないのではないか、と思っています。心の状態が良くなっても、合わないものは合わないのではないか、と。
 だから、そんなふうに考えている人には「そうですよ、きっと世の中に合わないんですよ」「でも合わなくたって良いんです。むしろ合わない貴方は繊細で、やさしくて、だからすてきな人なんですよ」と言ってさしあげたい気持ちです。
 今の世の中のすべてがだめだとは思わないし、今の世をうらめしく思うつもりはありませんが、世の中の価値観は時と場所でいろいろに変わりますし、人間はそれこそいろいろなのですから、そこに住んでいるみんなが世の中と合うわけがありません。合わない人があって当然なのです。
 あえて言うなら、今の世の中は、せわしないし、競争が激しいし、競争に勝つことが良いことだと言われているし、人情も薄い場合がある。
 こんな世の中にぴったり合って、悩みもなく、苦しみもなく、楽しくて、いつでも元気いっぱい、なんていう人がいたら、少なくとも私は、ちょっとその人とは合いそうにもありません。
 もちろん、多かれ少なかれ無理をして合わせているのが当たり前のことで、そういう人たちは立派だと思います。
 世の中になんか合わなくて結構、合わせる必要もない。でも、そうは言ってもそれは苦しいものです。合わないまま生きるのは大変です。
 だから「世の中に合わない自分はすてきだ」として、自分自身を好きになって大事にしてあげてほしいと思います。そして、合わないことそのものは悩みとせず、苦しさだけを静かに癒すことが何よりも大切なのだと思います。