うつなる人へ 〜うつがツレになってしまったら〜

 なぜうつ病うつ状態になってしまうのか、その原因はいろいろと言われていますが、さまざまな要因が重なり合っているようです。持って生まれた体質や性格もあるかも知れません。
 私はうつは持病のようなものだと思っています。

 私は、持病として痛風を持っています。かつては痛風は「ぜいたく病」などといわれ、現在でもそう思っている人は多いようですが、医者には「現代人はみんなぜいたくなので、ある程度は仕方ない。ほとんどは体質の問題である。しかし、肥満や運動不足には注意せよ」と言われ、薬を処方されました。「レバーやビールや卵はダメ」ともいわれてきましたが、医者は「それらばかりを極端に食べ過ぎるのでなければ、問題はない。それよりもやはり食事のバランと量、それに運動が大切」とも言われました。
 だから、私が痛風だと言って「ぜいたくだからなったんだ」などと言われると、とても悲しい気持ちがします。「私の過去や、今の生活や、仕事の内容や、人間関係や、日々考えていることなど、他人様に分かるわけないな」といった気持ちにも。

 それはともかく、私は痛風が持病となったからには、騒いでもしようがないし、何かを反省してくよくよしても仕方ない。それよりも、これから毎日の生活の中で、できることをするしかない。
 うつも同じことで、性格や体質(神経伝達物質の伝達の具合など)の問題が大きいとすれば、これはもうこの病気(あるいはうつ状態、あるいは“うつになりがち”だということ)とじょうずにつきあっていくしかないのだと思います。
 
 うつになると、確かに日常生活に支障が出てきますが(つまり、日常生活に支障がなければ、それは病気ではなく、問題でもないのです。程度問題だとも、現代の日本社会との関係だともいえましょう)、だからといって自分を責める必要などはまったくない。
 つい、うつになると、そのこと自体で自分を責めたり、無力感を覚えたりしますが、そんなことを感じる必要はまったくないのです。持病なのです。

 それよりも、うまくつきあうことを考える方がいい。
 うつ状態になったら、あれこれ考えずに、休む。仕事などで休めないなら、仕事以外のさまざまなことは、全部休む。不義理になっても休む。
 持病として経験を重ねてくると、予兆も分かるようにもなってきます。
 ハードな生活が続いたら、その時はハイな状態でも、後で必ずがっくりとくるから、できるだけ抑制したり、疲れを感じていなくても、早めに休んだり。
 仕事が立て込んでいたら、それがいつ終わるのか目星をつけて、とにかく、そこまでは何とかするけど、その後は、もう何がどうなるろうが、徹底的に休むことを決意したり。

 繰り返しますが、うつは持病だと思って、そのこと自体を悩むことはしない。心臓疾患になりやすい体質だとしたら、そういう体質であることを毎日思い悩んでも仕方ありません。それよりも、日々の生活に気をつけることです。
 だから、うつに関しても、もうそれは、うつが自分のパートナーになったんだと思って、うつが自分の連れ合いになってしまったわけで、ツレどうつきあうかを考えるのが良いのです。
 そして、そのつきあい方を工夫すると、驚くほど楽になる場合があります。
 うつの状態は本当に苦しいものですが、その中の「自分はなぜうつなんかになったのだろう」という苦しみをあまり苦しまなくて済むようになりますし、予兆を感じて予防したり休んだりと、ある程度、対処することができるようにもなります。
 うつがツレになってしまったら、考えて、経験を積んで、うまくつきあうことを考えましょう。