姿より香りで知れる沈丁花

 どこかの街路を歩いていて、ふいにその香りが飛び込んで来て、ほんの刹那、その香りの主を思い出そうと考えて、主が知れて、そうして今の季節を知る。
 今日もそうだったけれど、もう桜もずいぶんと咲いている。沈丁花が今年はずいぶんと遅いようだ。沈丁花と桜が、下と上からいっぺんに香りを放っている。
 桜は、つぼみが色づいてきたと思ったら、たちまち花開いてしまって、まだかまだかとじりじり待つ感じがなかった。今年の梅はそうだったけれど。
 まあ、それでもいいか。春が来たのだから。