古くさくて味わいが深くて哀切があるトランペットの音

 最近は、CDやネットなどで昔のアニメソングやヒーローもの主題歌の演奏の一端を聴くことができる。
 そういうものを聴いて思うことがいくつかある。

 よく憶えている曲は、今聴くと非常に楽曲としてすぐれており、また、個性的なものが多い。アレンジも凝っているし、ちょっとしか出てこないようなパーカッションもきちんと使っている。

 バンドは、レーコード会社や映画会社のバンドの場合が多いと思うが、編成は、ビッグバンドにストリングスを加えた、昔の歌謡番組の生バンドに、さらにホルンやティンパニなどのクラシック楽器を必要に応じて加えているものだろう。
 『ウルトラセブン』のウルトラ警備隊の行進曲を聴くと、テューバの代わりにトロンボーンティンパニで頭の拍を刻んでいるが、編成の欠如をうまく補ってかえって味わいがある。シンバルもスタンドシンバルをスティックで叩いているようだが、合わせシンバルにも劣らない見事な音色だ。こうしたスタジオミュージシャン的な人たちは、無名であっても、その演奏技術はすばらしいものがあった、と思う。

 演奏技術だけでなく、ちょっとしたところでも表現力がすばらしかったりする。『ウルトラセブン』のウルトラ警備隊の行進曲での2ndか3rdトランペットのビブラートが味わい深い。

 岡本喜八監督の『英霊たちの応援歌 最後の早慶戦』(1979年)という映画でのボレロのトランペットソロも、何というか昔の味わいがある。戦前のバンド、軍楽隊、戦後のバンドを継承してきたような音だ。今は、トランペット奏者の皆さんはとても美しい吹奏をするけど、こういう古くさくて味わいが深くて哀切があるトランペットの音も好きだ。