女性の清掃作業員が清掃中の男性用トイレを使用することについて

 今日12日の朝日新聞の投書「声」欄に、「元気もらった明るいあいさつ」と題して、駅の男性用トイレを清掃中の女性清掃員が、元気よく挨拶をしてくれたことに「地味で人から好かれない職場で、あのように明るく元気のよい振る舞いがどうしたらできるのだろう」と感激して励みになった、それが暗い日本を明るくしてくれる、という主旨の、誠に“心温まる”“思いやりのある”“前向きな”“健全な思考の”年配の男性の投書が載っていた。
 それを見て、しばらく前から考えていたことを思い出した。
 以前は、駅などの公共の場所のトイレは、清掃中となると使えないことが多かった。「清掃中」という看板が入口に立ててあるのを見たら、最初は大きな失望や時には的外れな憤りを感じ、とにかくしかし、身をよじるようにしながら、別のトイレを探さなかければならなかった。
 ところが、いつの頃からか「清掃中」とあっても使えることが多くなった。これはありがたいと思って、入ってみると、本当に清掃中で、女性の(なぜか女性がほとんど)清掃員が作業をしている。
 そのすぐそばで、私は用を足すことになる。しかし、それで本当に良いのだろうか、と思う。
 「清掃員が女性であっても、それは仕事なのだから、女性性というか、女性の尊厳のようなものを無視して、そのすぐそばで男性が用を足しても良い」のだろうか。そんなことを思う。
 だったら、男性の清掃作業員が女性用トイレを清掃(ということはあるのだろうか)中に、女性が用を足したって良いじゃないか、などとくだらないことは、考えない。そんな状況はない方が良いに決まっている。
 だいたいにおいて、女性用トイレで女性が使用中に男性作業員が清掃をしていたら、利用者は絶対に嫌がり、それは当然のことだが、男性用トイレで男性が使用中に女性作業員が清掃をしていたら、男性の利用者はほとんど嫌がらない、というか、嫌がらないという前提になっているようだ。男性の小用は個室で足すものではないから、用を足している男性の体のすぐそばで女性の清掃員が作業をしている状況にもなるのだが。
 そんな状況は、多くの女性が嫌がることだろう。それはもちろん、トイレの掃除という意味ではなく「男性が用を足しているすぐそばで女性が掃除をする」ということだ。
 それが嫌ならば、そんな仕事を選ばなければ良い、などとくだらないことを言ってはいけない。医療や介護の現場と一緒にするのもいけない。
 こういう問題は、実は、男性の側から提起する必要があるのではないか、と、最低限そんなことを考える。