京王線に乗って西の夕焼け空に向かう

 ちょうど夕暮れ時に、京王線に乗り、先頭車両に陣取った。
 
 客車の窓とその先の運転席の窓の向こうに、きれいな夕焼け雲があった。
 
 京王線はずっと西へ西へと向かって、真正面の夕焼け雲は動かない。
 
 架線とその支柱の鉄骨は、真っ黒なシルエット。
 
 線路は、上の面だけが食卓の上の磨いたナイフのように光る。
 
 そして、信号灯の赤や緑や黄や橙色が、まるで装飾のように美しい。
 
 あれは、本当は、観る人を愉しませることだけが目的で作られているのじゃないか。
 
 どこまで行っても、次々と目の前に現れてくるから。
 
 夕焼け雲はやっぱり動かなかったけど、いつの間にか、墨色になっちゃった。