『糸井ちゃんせんそうのお話してあげる』

 『糸井ちゃんせんそうのお話してあげる』(八木義之介著、蒼海出版 1971年8月30日第二版発行)は、おそらく私
が戦争というものを考える大きなきっかけとなった絵本です。
 糸井ちゃんという、小さな女の子が、お父さんに連れられて“せんそうばし”を渡って、戦争中の日本に行くのです。


 ある日の朝、お父さんに起こされて、おにぎりを持って出かけます。そこで糸井ちゃんは、たきぎ拾いをする子、ごはんにいもや豆ばかり食べる子、売るお菓子のないお菓子屋さんなどを見ます。
 疎開してしまった家に残されてやがて死んでしまう犬、学校のお昼に食べる物がなくて草をしゃぶって空を見ている子どもたちを見ます。
 疎開先で病気になってしまった子どもは、熱のあるままふらふらと外に出て汽車の線路の上を「お母さーん」と叫びながら歩いて行きます。


 父親が戦争に引っ張られてしまって悲しんでいる、きよみちゃんという子どもを見て「いかなきゃいいのに」と言います。お父さんは「にげたりすると、けいさつのひとにつかまって、ぶたれたりするんだ」と教えてあげます。
 きよみちゃんは、防空壕でお母さんやねこちゃんといっしょに震えていますが、やがて空襲が始まり、お母さんに手を引かれ、ねこちゃん抱いて逃げ出します。いつの間にか、きよみちゃんと離ればなれになったねこちゃんは、背中に火がついて焼け死んでしまいます。きよみちゃんはお母さんとも離れてしまいました。糸井ちゃんは、猛火の中に一人取り残されたきよみちゃんを連れてお父さんと逃げようとします。けれども、きよみちゃんは、せんそうばしを渡ることはできないのです。
 お父さんのリュックに入って、せんそうばしを渡り、何とか戻って来ることができた糸井ちゃんは、屋台のラーメンをお父さんと食べて、ようやくホッとします。でも、きよみちゃんどうしているかな、きよみちゃんたちにも、疎開の子にも、せんそうのまちの子みんなに食べさせてあげたいな、と言います。


 作者はあとがきで「ぼくらは、戦争を準備するものたちを、きびしく告発しなければなりません」「ぼくは漫画家です。だから、できるだけ漫画のもっている力で、出来る限り、平和への強い意志をあらわす責任があるのです」「この絵本を見終わったら、また、だれか他の人にも見せてあげてください」と締めくくっています。
 私も、これから自分なりに、ほんの微力でも、戦争をしたい人たちを告発し続けようと思います。
 1945年の今日、日本の戦争は一応、終わりました。