最後の赤とんぼを見た
18日の日曜日に、近所の野原で、赤とんぼを見た。
今年の最後の赤とんぼかも知れない。いや、もう12月半ばではないか。
気象がおかしいのか、その赤とんぼがおかしいのか、この地域がおかしいのか、それとも案外この季節でもまれに見ることがあるのか、分からない。
虫の中には、冬を越さないものもいて、私はいつも、そうした虫たちがいつまで季節の移ろいの中で生き延びているのかを、想う。
とりわけ“最後”の個体が気になってしかたない。
あれほど鳴いていた蝉が、晩夏になり、どんどん少なくなっていく。もう、秋がそこまできている時に、ふと、1匹が鳴き始めたりすると、もう、その鳴き声に反応してくれるパートナーはこの近くにいないのに、と気なってしまう。
コオロギやカネタタキなど秋に鳴く虫もそうだ。とんぼは目につくからやはり気になる。静かで目につかない虫の中にもそんな最後の1匹はいるだろう。
毎年必ず、その年の最後の1匹は存在する。最後に2匹同時に死ぬことも確率としてはゼロではないけれども、だいたいは、最後の1匹がいるのだ。
最後の1匹になっても、蝉もカネタタキも鳴き、赤とんぼはその体を陽光の下に翻らせる。