ほんの少し一人旅

 今日も早朝から夜まで取材。
 それが終わっての帰り、交通の便の関係で、東京の北東部郊外の庶民的な街を、しばらく一人で歩いた。
 屋根の低い、ちょっと古びた家並みが、外灯の少ない薄やみの中でもそれと判る。
 今時こんなどぶ川がまだあるのかと思うような、細い水路が、家々の間を低く、くねりながら流れる。水はこの界隈のいちばん底にあって、黒く、かすかに光っている。
 このどぶ川には、柵も何もない部分があって、ああいう所は、必ず私に夢の材料を提供してくれて、いつかそう遠くない将来、不安な時や寂しい時に夢に現れるだろう。
 こんな街が好きだ。いや、こんな街を一人で歩いていることが好きだ。
 この気持ちは、一人旅で知らない街を歩いている時と同じだ。
 ほんの少し、今日は一人旅を愉しむことができた。