シリーズ「電車で業」2 駆け込み乗車

 まあ、たまには、何が何でもその電車に乗らないと、仕事で非常にまずいことになる、とか、待ち合わせの人に大ひんしゅくを買う、という場合はある。
 けれども、あんなに頻繁に入線してくる山手線あたりで、どうしてあんなに駆け込み乗車をする人がいるのだろうか。
 これは、横断歩道での信号待ちでもそうだが、赤に変わりそうになると、走り出す人があれほど多いのはどういうわけか。そんなにみんな一刻一秒を争っているのだろうか。
 知らず知らずのうちに、急がされているのではないだろうか。
 駆け込み乗車は危ないし、電車の運行を妨害するから迷惑甚だしいものがあるが、何よりも、本当はそれほど必要ではないのに、何となくそうしないと損するような気になっているのでは、と考えると、つまらない気持ちになる。
 私のようにひがみっぽくて被害妄想的な人間は、「必要もないのに急いで、駆け込み乗車をすることで、そして、そういう生活に慣らされることで、どこかで得をしている奴がいる」ような気がするのである。
 いや、実際、人がエネルギーを使って急ぐことで、さまざまな分野で利益が生まれているのは事実に違いない。その利益の恩恵を、私も存分に受けてはいるだろう。
 けれども、無意識のうちに何かに慣らされて、右に左に振り回される、そういうことはやめたい。
 必要なこととそうでないことを、しっかり自分で考えて判断して決断して、おかしなすり減らしをしないで生きていきたい。
 踊らされるような業は、捨ててしまいたい。