「疲れるとこらえ性がなくなっていかんなあ」
黒澤明『野良犬』(1949年)の中に、「疲れるとこらえ性がなくなっていかんなあ」というような台詞が出てくる。
戦後間もない時代、殺人犯人を追うベテラン刑事の志村喬と、その指揮下の新米刑事の三船敏郎が、犯人の恋人の淡路恵子に聞き込みをする。
猛暑の最中、聞き込みに回って疲れが出たのか、つい話しの聞き方が荒っぽくなり、淡路を怒らせて泣かせてしまう。
淡路の方も、レビューの踊り子で、肉体を酷使する仕事にも貧しい生活にも疲れ切っている。
志村は、それより前の場面では、ピストルの横流しをしている女の千石規子には、見事に老獪な尋問をしているが、ベテラン刑事も疲れにはあらがえなかったようだ。
つまり、疲れると、うまくできるものも、うまくいかない。話しもうまく通じなくなるのである。
志村は三船に向かって先の台詞を言い、「疲れていたんだよ、俺たちも、あの娘も」と、あきらめたように語る。
私は、そういうことには用心深いつもりであったが、どうも相手とのやりとりでうまくいかないことが重なった。
どうやって、メンテナンスしようかな。