鯵の開き

 帰りに近所のスーパーに寄った。深夜営業をしている店で、その時は11時を過ぎていた。
 くたびれた気持ちのまま、店内を回っていた。
 生鮮品の棚から、鯵の開きをつかみあげて、かごに入れている若い女性の姿が、ふと視界の隅に止まった。
 何だか泣きたい気持ちになった。
 あの人が、鯵の開きを買って帰って、今晩か、明日か知らないが、あれを焼いて食うのだ、そういう当たり前があるのだ、そう瞬間的に思ったら、何だか泣きたい気持ちになった。
 そうして、私は、気持ちが落ち着いて、今晩、おだやかな気持ちで、眠ることができるような予感を抱いた。