いつでも会える関係なら会ってなくても寂しくない

 電話で、ある人と久しぶりに話しをした。ずっと会っていなかったので寂しかった旨を伝えると、その人は、寂しくはない、と言う。
 こちらが寂しいのに、あちらは寂しくないのかと、ちょっと淋しい気持ちがしたが、そういうことではない、と言う。
 会おうと思えばいつでも会える関係ならば、実際に会っていなくても寂しくはない。会いたくても会えない関係こそが、本当に寂しいということなのだ、と言う。
 会いたくても、会えない関係。
 人生では、そうした関係は、多くはないけれども、誰にでも確実にある。いくつかの場合が考えられるが、いずれにしてもそれは、本当に寂しいことだ、と思う。
 ところで、この電話で話しをしたという人は、五分刈りの頭に、鋭い目付き、浅黒い肌の色、寡黙だがしゃべると低い声、時に広島弁の男、旧知のベテラン写真撮影業のE氏である。