ソロで鳴くカネタタキよ

 夏が終わりに近づいた頃、ソロで鳴いているツクツクボウシを耳で追った。
 
 しかし、いつか忘れてしまい、鳴き声も途絶えた。
 
 秋が急に深まり、今度は、消えていくコオロギやカネタタキの声を耳で追った。
 
 もう、鳴いているものはいるまい。いや、待て、聴いてみよう。
 
 窓を開けて、耳を済ますとソロで鳴いているカネタタキの声が確かに聴こえる。
 
 ソロで鳴くカネタタキよ、君の仲間はもうおそらく近くにはいないだろう。もしかしたら、今年の最後の1匹かも知れない。
 
 それでも、鳴くのか。ソロになっても鳴くのか。
 
 そうか、やっぱり鳴くのだな。そういうものなのだ、きっと。