カーン・リーとジリオラ・チンクェッティとフランスギャル

 あまり聞き慣れない外国語は、その言語の歌を聞くと、とてもよく「雰囲気」が分かる。
 
 ゆっくりと語りかけるように歌う部分、叫ぶように歌う部分、発音を長く延ばして歌う部分、早口でまくしたてるように歌う部分。
 
 カーン・リーの歌うベトナム語のポップス、ジリオラ・チンクェッティの歌うイタリア語のポップス、フランスギャルの歌うフランス語のポップス。
 
 それぞれを、歌の良さと同時に、その言語の「雰囲気」を味わう。もっとも、歌が良いので、じっくりと言語の「雰囲気」に聴き入ることができるということも、あるだろう。
 
 映画『地雷を踏んだらサヨウナラ』(1999年 五十嵐匠監督 チーム・オクヤマ制作 浅野忠信主演)の中、70年代ベトナム戦争中の陥落前のサイゴン市内の場面で、女性歌手カーン・リーの名前が出てくる。レコードをかける場面もある。
 
 それがすばらしくて、ベトナムからの輸入CDを探してに入手した。10年くらい前のことだ。


 NHK特集『川の流れはバイオリンの音』(1981年初回放映 佐々木昭一郎演出 中尾幸世主演)の中に、イタリアの街でレコードをかける場面がある。そのレコードの冒頭部分を聴き、もっと聴きたいと思った。実は有名な曲だったが、私は知らなかった。おそらくイタリア語だろうが、フランス語かもしれない。
 
 曲の雰囲気から、70年代の女性歌手が歌うイタリアかフランスのポップスだと判断してCDを入手し、その歌はイタリアのジリオラ・チンクェッティが歌っているものだと分かったが、同時に購入したフランスギャルも良かった。これも10年くらい前だろうか。
 
 どれも良い。特に日本語にはない発音が、粘っこいような生々しいような「雰囲気」で良い。
 
 奇しくも、この3人は同世代のようで、カーン・リーは1945年、ジリオラ・チンクェッティとフランスギャルはどちらも1947年の生まれらしい。