遠雷と夏のそぞろ神

 今晩からまた、数日間、信州へ行くので、日曜日ながら仕事をしている。しているが、頭がぼーっとする。飲み過ぎではなく、暑さのせいで。
 
 遠雷が聞こえる。もっとこっちへおいで。
 
 信州の両親の隠居所の居間の正面から、天竜川の谷を挟んで、はるか南アルプスが見える。何年か前、夜にその方を見ると、その屏風のような連なりの上が、途切れることなく、ストロボのように明滅していた。音はまったく聞こえず、ただ稲妻の光だけが雲に反射して見えるのだ。すごかったなあ。
 
 15年くらい前、パキスタンの北部を走る夜行のバスに乗っていた時、車窓の外のはるか遠くに、稲光りが見えた。この時は光だけでなく、斜めや水平に走る稲妻のギザギザが小さく見えた。やっぱり音はまったく聞こえず、連続して右に左に光っていた、すごい風景だった。
 
 酷暑の中で遠雷の音など聞いていると昔の旅のことが、よく思い出される。夏は、そぞろ神が呼ぶのかな。