1989年中国の戒厳令と映画『孫文』(1986年中国)

 1989年5月19日頃だろうか、旧友のIと一緒に銀座で映画『孫文』を観ていた。観る前だったか、観た直後だったかに、中国で戒厳令が布告されたと聞き、観ていた映画の歴史背景と思い合わせ、驚いた。
 この時、北京には私の大学の友人が2人も留学していたが、あの年の今日、6月4日の天安門事件が起きる直前に帰国してきた。
 あとで聞いたところでは、1人は新彊ウイグル自治区に旅行中で、ウルムチあたりで日本語の短波放送を傍受し、戒厳令布告を知ってあわてて北京に戻ると学校や寮はもぬけの殻で、大使館に出頭して帰国したという。
 もう1人は、天安門広場にいて、6月中旬に開催予定の、中国共産党第13期中央委員会第4回全体会議(13期4中全会)までいるつもりで、ぎりぎりまで踏みとどまっていたが、大使館に帰国を説得されて戻ってきたのだそうだ。
 私はこの事件に少なからぬ衝撃を受け、翌年の夏に、北京へ行くことになる。