大雪は景物

 東京では雪はあまり降らない。積もることは滅多にない。
 
 私が子どもの頃はもっと降ったような気がするし、大学受験の時は大雪だった。
 
 今日のような大雪だと、たいていの大人は、迷惑だと言う。当然である。仕事に差し障りがあるからだ。子どもの頃とは違う。
 
 私も今日は、大切な打ち合わせがあるから、難渋するかもしれない。
 
 それでも、窓から夜の雪景色を見ると、それは見事な景物である。
 
 夜なのに、こんなにも地面が明るいなんて。雪の粒によって、闇が目に見えるものとして存在しているではないか。
 
 静かだ。
 
 何の努力をしなくても、消費するものがなくても、こんなにすばらしい異世界を見ることができる。
 
 東京でも、大雪はやはり大変だけれども、東京の雪は、どうしても、景物である。